計算用紙

憤一字、是進学機関

プロフェッショナル 仕事の流儀 「威信をかけて、水道を守る~水道技術者・笑喜久文~」

 

この番組を毎週見ているわけではない。たまたまこの回見た。とても感動した。どこに一番感動したかというと、彼の信条である「明日は今日より進化しよう」という言葉に、かも知れない。

 

水道の漏れを見付けて、直す、保守する、という仕事は、想像するに、あまり進化が期待されている仕事ではないと思う。技術者も現場の叩き上げのおっちゃんというイメージ。実際この笑喜氏も叩き上げの60台でイメージ通り。入社直後は配管の方をやっていたが、途中で、保守に異動になる。これは当人にとってはうれしくないことだったのかも知れない。

その彼が音だけで漏水を見付ける技術を身に付けるために、何年もかけて経験値を上げ、聞き方、漏水の見付け方を工夫してきた。
その彼の信条が「明日は今日より進化しよう」。保守を始めたころの一人前になるまでの信条という文脈で紹介されていたが、今も座右としている言葉だと思う。

「今日の自分と明日の自分が同じだったら、何も進歩がなくてつまらない。だから、少しでも変わっていかなければならない。」

そう、しかも彼は進化を楽しんでいる。

保守という言葉がそもそも進化と逆に聞こえるのに、保守を極めるために自分を進化させ続け、そして、進化を楽しんでいる。会社をつとめ上げ、その技術を認められてマイスター的な賞かなにかをもらい、そしてまだ進化を求めている。

保守という仕事は、受け身だし、終りがないし、感謝されることも少ないし。東京水道局のふくろう隊は生活雑音を避けるために夜見回りをするそうだし。全く後ろ向き。でも彼はその技術を身に付けることを「進化」だと認識し、その中に楽しみさえ見出し、定年まで仕事をやり続けた。そして、水道改善のためにミャンマーに派遣された。

しかし水道保守道のようなメンタリティのないミャンマーの若い技術者は日本から来たおっさんに当然反発します。折角直したのに、最後の数件の水を届けるために、水圧を上げて、直した所からまた漏水する。笑喜氏を始めとする日本人組は、黙々と直し続ける。

日本人は外国に出て行っても、こういう黙々と現場で働き続ける技術者が多いように思う。そしてそういう黙々現場系技術者が海外に出て行けばいいのにな、と思う。本当は、「リーダー」の方が国際的日本人技術者イメージアップの観点からは良いのかも知れないけど。黙々をかっこいいと感じる私も日本人だな。

「 明日は今日より進化しよう」という一見ありふれた信条は、進化と遠そうな、地に足が付いた人に言われると、強い言葉に聞こえる。

拡大解釈かも知れないけど、

今日失敗しても、明日、今日より進化していれば、同じ失敗を避けることができるかも知れない。失敗を取り戻すこともできるかも知れないのだから、今日の失敗に絶望する必要はない。今日も明日も大して変わらない日常かも知れないけど、私の方が進化すれば、別の世界に感じられる。腐る必要もない。進化することは楽しみだし、進化することで世界が楽しくなる。